2011年02月04日

雪の鎌倉みち(1) ~生島足島神社

前回,鎌倉街道上道について概説しましたので,今回からは,信州における鎌倉街道近辺の旬な風景など,ご紹介していきましょう。

去る1月の雪の日,上田電鉄別所線の下之郷駅に降り立ち,駅すぐ近く,日本総鎮守『生島足島神社』に詣でました。

雪の鎌倉みち(1) ~生島足島神社
●この鳥居から先が生島足島神社の境内地

あたり一帯が雪化粧の中,朱色を基調とする神社の建物が一層際立っていました。午前10時,本殿前には普段は常駐していないはずの巫女さんの姿が数人。ほどよい賑わいの境内では,新年の振舞い酒などの催しがありました。 

雪の鎌倉みち(1) ~生島足島神社
●本殿を囲む神池も真っ白に雪化粧

神池に囲まれた小島の上に建つ本殿の中では,新年の祈祷が随時,催行中。ご神体である大地の上に設置された椅子に腰掛け,神主の祝詞とともに,一同,ご神体である大地に向かって新年の祈願をしています。
 生島足島神社は大地そのものがご神体であることは,由来書や神社のホームページを見れば,書いてあることだけど,本殿がある場所は神池に周囲を取り囲まれた小島(「神島」という名です)。今は,立派な橋が渡されている,その「神島」自体がかつてはご神体として崇められていたということでしょう。


雪の鎌倉みち(1) ~生島足島神社
●提灯の氷柱が,信濃の凍てつく寒さを物語っています

仏教が伝来する以前の神道(古神道)では,現在見られるような社殿(本殿)などの建物はなく,山,大木(森林),洞窟,滝,巨岩,はたまた海や池に浮かぶ島など自然物がご神体そのもの,あるいは神が宿る聖域として崇拝され,祭祀が行われてきました。
 この古代祭祀のスタイルが今に残る例を挙げれば,山そのものをご神体とし本殿(神殿)を持たない大神神社(奈良県)や諏訪上社の本宮。森林をご神体とし,やはり本殿がない諏訪下社。巨岩群をご神体とするため本殿がない磐船神社(大阪府)。
 そして,生島足島神社には今は立派な御本殿が「神島」の上に建っているけれど,上古の昔にはやはり本殿はなく,池に浮かぶ島そのものが,穀物を育む「大地の神」として信仰されていたのでしょう。


雪の鎌倉みち(1) ~生島足島神社
●古の祭祀遺跡「磐座・磐境」も雪化粧。本殿では祈祷が行われていました

その古代祭祀の痕跡を今に伝えているのが,朱塗りの本殿脇に佇む「磐座・磐境」。1メートル前後のいくつかの大きな岩には今も注連縄が張られています。
 古代の科野(しなの)の人々はきっと,池に囲まれた「神島」の脇にある,磐座・磐境を前に祈りの言葉を捧げ供物を奉ったのでしょうね。


雪の鎌倉みち(1) ~生島足島神社
●境内から東へ歩くこと約1キロほどに,朱色の巨大な大鳥居がそびえています

そして,時代がかなり下って中世。生島足島神社の南を,鎌倉幕府と信濃を結ぶ大動脈,鎌倉街道上道(鎌倉みち)が通じるようになると,塩田北条氏をはじめ鎌倉武士から篤く信仰されるようになります。特に,13世紀後半には塩田北条氏の2代目当主,北条国時は生島足島神社の社殿を修築しました。また,証拠はないものの,生島足島の境内社である八幡神社(由来等未詳)も,八幡神を篤く信仰していた中世鎌倉武士が勧請,合祀した可能性が高いのでは,ともいわれています。

昼前,境内から東へ1キロほど離れたところにある大鳥居まで歩きました。昨年の4月には,御柱祭で大変賑わった所です。雪山をバックにそびえる巨大な朱塗りの鳥居は大変見ごたえがありました。
 この大鳥居のすぐ下から,来た道,生島足島神社の本殿がある方向を眺めると,塩田・別所あたりまで独鈷山も見渡せます。


“無限に広がる雪景色”
 
生島足島は「信州の鎌倉」のスタート地点。午後には,見渡すエリアを西へと伸びる鎌倉みちへといよいよ歩を進めました(次回につづく)


なお,今回歩いたエリアを鎌倉街道上道の地図上に示すと以下のようになります。

雪の鎌倉みち(1) ~生島足島神社
●拡大図中の茶色の線が本レポートで,歩いた範囲


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Posted by まほろば旅日記編集部 at 01:14 │信州の鎌倉みち